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精神症状の捉え方

認知症の患者さんが「背中に赤ちゃんが乗っているの」とおっしゃったら、皆さんはどう考えますか? もちろん第三者から見た際に、患者さんの背中に赤ちゃんは乗っていません。そこで事実と異なる内容を言っているから「妄想」と所見をつけて対処療法でいいのでしょうか?
実はこれは私が実際に体験した例で、答えは胆のう炎で、その放散痛を患者さんなりの解釈で表現し
たものが「赤ちゃん」だったということがありました。手術後すっかり訴えが消失したことが今でも忘れられない一例です。
このような例は精神科診療をやっていると枚挙にいとまがありません。特に統合失調症や認知症など、認知機能低下を伴う精神疾患の方の症状の訴えは非典型的になりやすく、身体疾患が見逃されやすくなります。どういう背景を持つ患者さんなのかを念頭に、新しい訴えには「ひょっとして」の感覚を忘れ
ないことが表面的な精神症状を見抜く一助になるかもしれません。

精神保健指定医 清水 峻 

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